紫外線でできること
洗浄と改質
紫外線による洗浄・改質(UV cleaning & modifying)は、低圧水銀ランプから発光する短波長紫外線の持つエネルギーとそれにより発生するオゾン(O3)の力で、素材表面の有機系皮膜除去やプラスチック表面の親水化による密着力・接着力を向上させる洗浄表面改質方法の一つです。
用途・事例
About Cleaning&Modifying
紫外線による洗浄・改質技術は、ガラス・樹脂・金属などの各種素材に密着強度の向上や親水性の向上・ぬれ性改善など様々な効果を生み出す技術として、液晶、半導体、電子材料などの製造プロセス分野では欠かすことのできないプロセス技術です。そのアプリケーションの一部を紹介します。
業界 |
製品 |
用途 | 洗浄 | 改質 | |
自動車 |
外装関連 | ランプリフレクター | PPS・PBT・LCPほかと金属蒸着膜との密着性向上 | ● | |
外装パーツ | 各種ポリプロピレンと塗料や接着剤との密着性向上 | ● | |||
内装関連 | シート | ウレタン樹脂などの樹脂材と接着剤の接着性向上 | ● | ||
インストルメント・パネル | 化粧用転写フィルムと密着性向上 | ● | |||
バックミラー | ガラスと金属蒸着膜との密着性向上 | ● | ● | ||
機能部品関連 | 各種樹脂コネクター | エンプラなどの樹脂材と充填用樹脂との密着性向上 | ● | ||
エンジン周辺部品 | 金属と塗料の密着性向上、PPSと接着剤、塗料との密着性・接着性向上 | ● | ● | ||
エレクトロニクス | 電子部品関連 | セラミック基板 | セラミックとモールド材(エポキシなど)との密着性向上 | ● | |
プリント基板 | レジスト膜上の有機物除去 | ● | |||
コンデンサ | PPSとマーキングインクとの密着性向上 | ● | |||
圧電ブザー | 金属基板とセラミックとの密着性向上 | ● | ● | ||
筐体関連 | スマホ・デジカメ・冷蔵庫 | 各種樹脂基材と塗料の密着性向上、金属表面と塗料との密着性向上 | ● | ● | |
そのほか | キーボード(テンキー) | シリコンゴムとインクとの密着性向上、 | ● | ||
エンブレム | ABS樹脂とめっきとの密着性向上 | ● | |||
タッチパネル | ITO膜とガラス・フィルムとの密着性向上 | ● | ● | ||
液晶パネル | ガラス | ガラス表面の有機物除去 | ● | ||
カラーフィルター | ガラス基板の前洗浄 | ● | |||
半導体 | ウエハー | 成膜前の洗浄、レジスト塗布前の洗浄 | ● | ||
リードフレーム | リードフレーム(金属、プラスチック)とモールド材との密着性向上 | ● | ● | ||
光学製品 | ガラスレンズ | ガラス表面の有機物除去 | ● | ||
樹脂レンズ | コーティング剤との密着性向上 | ● |
水晶振動子
水晶振動子は、水晶の圧電効果を利用して高い周波数精度の振動を発する素子で、携帯電話やパソコンなどの情報通信機器やAV機器、カーエレクトロニクスなど様々な電子機器に使われています。水晶振動子は、表面の汚れが性能に大きく影響する為精密洗浄が必要となります。製造プロセスにおいて電気的信号を発信するために水晶片に金や銀などの金属膜を蒸着させます。
メッキ前の紫外線処理
携帯電話やデジタルカメラ、パソコンの筐体、自動車の内外装材としてABS樹脂は広く使われています。しかしABS樹脂は耐候性に弱い為、外装材として使用する場合は樹脂表面にめっき処理を施す必要があります。
通常はめっき前に有害物質の無水クロム酸を含むエッチング液でエッチング処理を行いますが、環境問題や表面の粗化などの問題から、代替処理技術として環境負荷の少ない紫外線処理が行われています。
有機EL
有機EL素子は非常に薄膜で酸素や水分に劣化しやすい為、真空中で素子の背面を金属やガラス製の封止用キャップをシール剤(紫外線硬化性樹脂)で封止して、酸素や水分を遮断しています。品質に大きく影響する封止部分の密着性向上の目的で、封止用キャップの接着面の有機汚染物質を紫外線で洗浄・改質しています。
ハードディスク
コンピューターなどの情報記憶装置として用いられるハードディスクドライブは、磁気ヘッドが高速回転する磁気記録媒体上を浮上走行することで情報信号の書き込み及び読み取りが行われています。小さい浮上量で、磁気ヘッドが媒体表面に接触することなく安定に走行する為には、媒体表面に異常突起などが無く平滑であることが重要です。通常の洗浄方法で残った異常突起(残存した洗剤などの有機物の残渣)の除去に媒体用ガラス基板の表面洗浄の最終工程として、紫外線照射が行われています。